日本国内の手袋製造の約9割をしめるといわれる香川県東かがわ市。有名な海外ブランドや著名なスポーツ選手のオーダーメイド手袋なども数多く手がけている日本一の手袋産地です。
今回は栗林庵でも毎年大人気のありそうでなかった「てぶくろ屋さんがつくったもこもこソックス」シリーズを作っている株式会社フクシンさんにお邪魔しました。
フクシンは現社長である福﨑二郎氏の叔父が設立した福崎手袋から独立する形でお父様の福﨑清氏が1977年に創業しました。2018年10月現在の卸先は500社、4,000店舗にものぼります。手袋の商品ラインナップは大きく分けてニット商品と縫製商品(パーツをつなぎ合わせたもの)ですが、その両方の系統を持っています。
またフィリピンのセブ島にあるメプサという自由貿易区にも自社工場を持ち、最近はアメリカやヨーロッパの展示会にも力を入れるなど、海外へも目を配っています。
写真は裏起毛するための機械。チーゼルという植物の花の部分を使って起毛を行います。花の大きさが均等になるように栽培時に間引いたりしないといけません。
チーゼルを取り付けた部分を回転させ、そこに手袋などを押し当てることによって起毛させます。ほどよく起毛させるには熟練した技術が必要です。このようにフクシンの商品には人の手がかかせません。
フクシンさんの商品をつくるためには株式会社島精機製作所の専用のプログラミング用ソフトを使います。このソフトを使いこなすには島精機製作所で最低3ヵ月の研修を行わないといけないそうです。画面上で色分けされたものは糸の色ではなく実は編み方を指示するものだそうです。素人の私たちにはどういう仕組みになっているかさっぱりわかりませんでした。笑
手袋は季節商品なので本格的な出荷が始まる前の8月末から9月半ばまでの期間は倉庫は出荷を待つ商品でいっぱいです。手袋販売業を行うためにはこのように広大な倉庫スペースが必要です。創業当初、スレートと呼ばれる波状の壁1枚だったフクシンさんの社屋は、業績が上がるにしたがって増築を重ね、現在のように大量の在庫をストックできるようになりました。
また現在はコンピュータで管理され、ピッキングから、検数、検品、発送まで一貫したシステムでスムーズに対応できるそうです。
フクシンさんがこだわるのは一つひとつ愛情を込めて作ること。高価な機械を使って手袋や靴下を編み上げますが、不良箇所がないかチェックしたり、タグ付けや袋に入れたり、最後には人の手が入ります。
目落ち(網目の抜け落ちたところ)や傷がないかチェックするという作業には自分たちで自作して改良を重ねた道具を使います。
モコモコソックスは手袋を作っている機械を使って作るため、つなぎ目がなくシームレスなので履き心地がとても快適です。
製造は1台の機械で最初から最後まで編み上げるため1足を編み上げるのに30分~60分もかかります。
モコモコソックスは今年で販売4年目ですが、去年は売れすぎて生産が追いつかないほどだったそうです。突然のヒット商品ができたことにより、はじめて自分たちのキャパシティーを知ることになりました。「当たり前のことですが、作れるもの以上のものは売れない」ということを身をもって知ったそうです。
社員のみんながフクシンの商品や仕事を通して明るく元気な生活を永く続けることができるようにしたい。それが福﨑社長の願いです。
この変化の早い世の中でネット販売など時代に合わせて変化することは必要ですが、その反面、愛情をかけて作った商品がお客様に求められるというところは昔から変わらないはず。そこを大事にし、これからも1つ1つに愛情を込めてお届けしたいとおっしゃっていました。