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【まるく農園】曽保地区でみかんを栽培する

【まるく農園】曽保地区でみかんを栽培する

今回は志保(しお)山の中腹に位置するまるく農園に伺いました。まるく農園が位置する仁尾町の曽保(そお)地区は瀬戸内海に面し、急斜面であるのと日照時間が長いこともあり、香川県内で有数のみかん産地です。

山上からは、日本のウユニ塩湖として、全国的に有名になった父母ヶ浜(ちちぶがはま)や伊吹いりこで有名な伊吹島を望むことができます。

今回はまるく農園を経営する組橋さんご夫婦にお話を伺いました。

組橋さんご夫婦。右下に見えるのが父母ヶ浜


最初にみかんが曽保地区にもたらされたのは明治の終わり頃に遡ります。初めは日本屈指のみかんの生産地、和歌山県から海を渡ってやってきました。このあたりは山腹の傾斜地ということで水を得るのが難しく、かつては葉タバコや唐辛子の生産が盛んでした。そこから戦後の農地解放の際に、国からの払い下げの山地を15軒ほどの農家で分け、みかん畑を開いたとのこと。大正9年生まれの組橋さんのお爺さんの時代の話です。

曽保地区は瀬戸内海に面していて、冬の寒さが穏やかです。また、讃岐山脈と七宝山脈の2段階の山脈で雨雲が堰き止められ、降水量もわずか。産地では育てられる作物が限られる中、そんな気象条件とみかんの相性が抜群でした。

全国的にみかん農家は家族経営がほとんどで、生産人口も大幅に減少。平均年齢は約72歳と後継問題に課題を抱えています。そんな中でまるく農園のお二人はまだまだ若手です。

ご夫婦以外にも外国人スタッフを含め数人の従業員に手伝ってもらっているそうです。海外からのスタッフにはゆくゆくは永住権を取ってオーナーになってもらいたい、あるいは祖国に帰った後にも、ここでの経験やつながりを活かし農作物の販売を国をまたいで広げたい、そんな夢の広がるお話を聞かせてくれました。

倉庫にならぶ道具たち


組橋聖司さんが家業の果樹畑を継ぐ決意をされたのが27歳の時、当時はご両親とともに、キウイの栽培を担当されていたそうです。小さな頃は跡を継ぎたいという気持ちは全くなかったそうですが、サラリーマンは自分には向いておらず、みかん農家であれば自分の裁量で全て決められるということで、その道を決断されたそうです。ただ、初めてすぐにその考えが甘かったことに気づきます。当初は労働時間と利益のバランスにおいて、時給換算すると高校生のバイトよりも低かったそうです。

その後はわずか3年目には仕事を全て任されました。31歳の時に、広島県出身の愛子さんとご結婚。愛子さんは当時、香川県内の別の果樹園で働いていました。まるく農園では自身の栄養士の資格を活かし、加工場の設備設計にも携わっています。

ひと昔前だと、農家に嫁ぐお嫁さんは家事をしながら、農作業のお手伝いをするというのが多かったようですが、まるく農園では聖司さんは畑仕事に集中し、愛子さんも自主的にやりがいを感じられるような業務を担当し、役割分担をしているそうです。

聖司さんの運転で畑に案内していただきました。

車1台しか通れないほどの狭い山道を、時に何度も切り返しながら登っていきます。

今では収穫時にみかんを運ぶためのモノレールが設置されていますが、昔は三尺道(幅1メートル弱の道)しかなく、人力で運んでいたそうです。中にはモノレールを自分で設置する方もいらっしゃるそうです。

畑には鳥よけの機械がニワトリのような鳴き声を絶え間なくたてていました。 ちょうど私たちが伺った2024年9月末頃はみかんが緑から黄色に色づき始めていました。

現在、まるく農園では、11月、12月前半、12月後半と時期によって出荷するみかんの品種を変えています。みかんだけで約300品種も種類があり、そこから選びます。農家によってどの品種を選ぶかが違い、個性が出ます。

また、近年では温暖化の影響は大きく、害虫の生育状況、雨の降り方、耐熱性、耐寒性も変化しているので、それに合わせて流動的に品種や栽培方法なども変化させているそうです。

新しい品種の試験栽培についても積極的で、県外視察や苗木屋さんに足を運び、実験的1、2本植えてみて、うまくいけば増やしていきます。1本植えるのに5年、さらに自分のところで増やすのに5年、合わせて計10年ほどかかり、かなり長いスパンの話になり、失敗はできないため、品種の選定の段階でかなり入念に選ぶそうです。そこでは、品種と自分の畑の土壌との相性を見極める力が必要です。同じ畑であれば栽培条件は同じかと思いきやたった20メートル離れただけで環境条件が代わり、育て方を変えないといけないというシビアなもの。こういったノウハウやお爺さんの代からの試行錯誤は、文章での伝達ではなく、実際に体を動かしながらの作業していくなかで身につけていったそうです。

レモンとレモン果汁ジュース

まるく農園ではみかんだけではなく、レモンに可能性を感じ、近年栽培に力を入れています。日本のレモンの需給の内訳は海外輸入6万トン、国内1万トンとのことです。今後は輸入品が入ってきにくくなる可能性や価格が高騰することを考えると、大きなチャンスです。

レモンはみかんに比べても寒さに弱く、雪が積もると木が枯れすぐにだめになってしまうそうで、降水量の少ない曽保地区は栽培に向いています。

組橋さんが商標を取得した「はつ恋キュンッれもん®」。このレモンを絞った果汁を飲食業者に卸しているそうですが、果肉部分だけではなく、白い内皮のワタの部分も入っているため、ただすっぱいだけではなく、甘みや濃厚さがあるそうです。(こちらのレモン果汁は一般への小売は行っておらず、業務用として飲食業者やキッチンカーにのみ卸しているそうですので、興味のある方は直接お問い合わせください。)

今後の大きな方針としては、みかんについては栽培面積を狭めてもいいので品質を上げるところにこだわっていきたいと語っていました。

今回の取材で、戦後からの時代の流れの中で地理的条件との関係で曽保地区でどのようにみかんが栽培されるようになったか、また、温暖化によるこれからの栽培環境の変化などを知ることができました。 組橋さんご夫婦の話からはお互いへの信頼関係を感じました。また、果樹栽培にかける真剣な思いや今後の展望について楽しそうに語る様子を聞くことができ、こちらも元気をもらいました。

みかんは日本人にとって身近なフルーツで、品種改良も数多く行われていることから、とても愛されていることが分かります。テーブルを囲んで家族や友達とみかんを一緒に食べると不思議と安心感を感じる方も多いのではないでしょうか。香川県西部で組橋さんご夫婦を中心に愛情をかけて作られた、まるく農園のみかんを大切な人への贈り物に選んでみてはいかがでしょうか。